糖尿病について
残念ながら、糖尿病を根本的、つまり、根治できる治療は現在のところ、ありません。糖尿病は生活習慣病と言われますが、生活習慣の乱れがすべての原因ではなく、その患者さんの持って生まれた素因も重要な原因であるからです。では糖尿病治療の目的はなんなのでしょうか。糖尿病の治療の目的は、血糖を正常値に近づけることで、糖尿病の合併症を防ぐことです。糖尿病の慢性合併症として、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害)及び大血管症(心筋梗塞、脳卒中など)があげられます。つまり、適切な治療を行い、適切に管理を行っておく事で、糖尿病のない方と同じような寿命を全うする事が治療の目的なのです。そのためには、糖尿病の管理のみならず、その他の生活習慣病のケアも重要となってきます。また、糖尿病の患者さんは、様々な癌の発症率も、若干ですが、高いことが明らかにされており、癌の早期発見も管理の上で重要と考えます。当院では糖尿病のみならず、内科全般的な管理を行ってきます。そのために、医療連携も重視し、他の領域の専門医の診察が必要な際は、すぐに紹介をいたします。
血糖値とインスリン
血液中のブドウ糖の量(血糖値)は、食事を摂取すると高くなりますし、空腹の状態になると低くなります。正常の方は、食事を摂取しても、血糖値が異常になることはありません。これは、血糖を組織へ供給するホルモンであるインスリンが、血糖値に応じて、膵臓のβ細胞から分泌されるからです。インスリンは血糖を下げる唯一のホルモンです。血糖値が高くなれば、インスリンの分泌が亢進し、血糖値が低くなれば、インスリンの分泌は抑制されます。このため、通常、血糖値は、1日を通して、100mg/dlから150mg/dl程度の間で維持されます。
糖尿病とは
糖尿病は、何らかの要因によって膵臓のβ細胞からのインスリンの分泌が低下したり、インスリンの効きが低下したり(インスリン抵抗性)が低下して、血糖が上昇してしまう疾患です。
糖尿病の診断について
診断にあたっては、いくつかの要素を複合的に分析することが重要ですが、一応の目安として、空腹時血糖値が126㎎/dl以上の場合を糖尿病型、110~125㎎/dlが境界線(糖尿病予備群)、109㎎/dl以下のときは正常とされています。ただ、空腹時血糖が正常でも、糖尿病の初期では、食後の高血糖が隠れている場合があり、注意が必要です。
もう、一つの指標はHbA1c(ヘモグロビンA1c)です。これは血糖の平均的を示す指標です。つまり、空腹時血糖値が正常であっても、随時血糖値やHbA1cが高いときは、食後の高血糖が隠れており、糖尿病の可能性があります。
当クリニックでは、これらの指標に基づいて糖尿病や糖尿病予備群の診断を行ないます。その上で、病気が悪化しないように治療や生活上のアドバイスを行っていきます。
糖尿病を放置していると
糖尿病に罹患したとしても、初期の段階ではほとんど自覚症状が見られません。これが逆に怖いことで、放置し続けると、合併症が進行してしまいます。糖尿病の合併症は、3大合併症が、神経障害、網膜症、腎症です。また、大血管症として、脳梗塞や心筋梗塞、閉塞性動脈症があります。合併症が進行すると、失明や腎不全、足の切断、脳梗塞、心筋梗塞などで日常生活に大きな支障が出ることもあるので注意が必要です。
このような症状の方はご相談を
- 健康診断などで「血糖値が高い」と指摘された
- 喉がよく渇く、水をよく飲む
- 尿の回数が増えた、尿のにおいが気になる
- 体重が急激に増加、または減少した
- 最近、疲れやすくなった
- 満腹感が得られない(いくらでも食べられる)
- 手足がしびれる
- 足がむくむ
- 皮膚が乾燥して痒い、皮膚に出来物ができやすくなった
- やけどや怪我をしても、あまり痛みを感じない
- 切り傷やその他の皮膚の傷が治りにくい
- 視力が落ちてきた、目がかすむ
- など
糖尿病専門医が高度な診療を行います
当クリニックでは、糖尿病専門医、研修指導医である院長が中心となり、専門的で高度な糖尿病治療を提供しています。糖尿病は自覚症状に乏しいことが多いので、定期的に血糖値やヘモグロビンA1cを検査し、病気のリスクを軽減していくことが大切です。当クリニックでは、様々な検査によって個々の患者さんの病態をしっかりと見極め、ここの患者さんにあった適切な治療を提案、提供します。糖尿病の患者さんはもちろんのこと、健康診断などで血糖値の異常を指摘された方につきましても、お気軽にご相談ください。
糖尿病の種類
- 1型糖尿病(自己免疫性、特発性)
- 2型糖尿病
- その他の特定の機序、疾患によるもの
- 妊娠糖尿病
1型糖尿病
インスリンを産生する膵臓のβ細胞が、主に自己免疫な機序によって、壊れていく糖尿病です。若年層で発症するケースが多いのですが、成人期に発症することもあります。2型糖尿病とは異なり、膵β細胞が失われていますので、外からインスリン自体を補う治療が必須となります。注射の方法として、1日数回インスリン注射を行う方法や、小型の機器でインスリンを持続的に投与する方法があります。
2型糖尿病
日本の糖尿病患者の9割以上、成人発症のほとんどがこの2型糖尿病です。2型糖尿病は、生活習慣病と言われますが、生活習慣の乱れのみが原因ではありませんが、大きな要因となります。インスリン分泌の低下という体の素因に加えて、生活習慣の乱れが影響して、発症します。日本においては、戦後、食生活の飽食や欧米化、自家用車の普及で代表されるような運動不足により、糖尿病の患者さんが急激に増加しました。
その他の特定の機序、疾患によるもの
これには、ミトコンドリア糖尿病などの単一遺伝子異常による糖尿病や、薬剤性の糖尿病などがあります。
妊娠糖尿病
妊娠中に指摘された耐糖能異常のことです。妊娠中の明らかな糖尿病は、妊娠糖尿病ではなく、糖尿病型と診断されます。妊娠糖尿病とは、わかりやすくいうと、妊娠時のみの耐糖能異常です。ではなぜ、妊娠糖尿病の方は、妊娠時に血糖が上昇するのでしょうか。妊娠時、胎盤が形成され、分泌されるホルモンの影響でインスリン抵抗性が生じます。インスリン抵抗性を補うために、妊婦の方のインスリン分泌量は増加します。妊娠糖尿病の方は、妊娠時に増加したインスリン抵抗性を補うためのインスリン分泌が十分ではないのです。妊娠中、妊娠糖尿病と診断された方は、出産すれば、元の耐糖能の戻るのですが、将来的に糖尿病を発症するリスクは、数倍にも上昇するので、出産後も定期的に血糖を観察する必要があります。
血糖コントロール目標について(高齢者における血糖コントロール目標を含めて)
糖尿病患者における合併症予防のための血糖管理目標値は、HbA1c 7%未満です。これはHbA1c を7%未満に保つことで、合併症の進行を抑えることが、これまでの臨床研究で明らかになっているからです。しかしながら、重症低血糖や体重増加をきたすような治療方法では、将来的な死亡率が増加することも明らかになっております。低血糖を避けた、血糖コントロールが重要です。
特に、高齢者においては、低血糖は認知機能障害やその他の合併症につながりやすいために、留意する必要があります。2016年に、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会によって、高齢者における血糖コントロール目標が発表されました。この血糖コントロール目標は、患者の認知機能 や日常生活動作(ADL )の評価に基づいて個別に血糖管理を設定する事を特徴とします。低血糖が心配される薬を使用している場合に限り、目標値の下限も決められています。しかしながら、高齢者糖尿病の病態は個々によって千差万別なので、個別性を重視し、目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としています。
糖尿病薬について
糖尿病の薬は、数種類の内服薬に加え、インスリン製剤及びその他の注射製剤があります。糖尿病治療のガイドラインでは、どのような治療をまず、行うべきか、あるいは、どのような治療の組合せがよいのか、明記されておりません。これは患者さんによって、糖尿病の病態が異なるために、当然といえると思います。私は患者さん個々の病態、年齢、合併症の有無、薬の特性など総合的に判断し、最適な治療を提案して、患者さんと相談しながら、治療薬を決定いたします。
インクレチン関連薬について
インクレチン関連薬は現在糖尿病薬の薬としてもっとも使用されています。これは、副作用発現率が少なく、かつ、優れた血糖降下作用が期待できるからです。インクレチンは小腸から分泌されるホルモンで、インスリン産生細胞である膵β細胞でのインスリン分泌を促します。インスリン分泌作用はグルコース依存性であるために、低血糖の副作用も少ないことが最大の特徴です。薬としましては、飲み薬と注射薬があり、それぞれ、長所や短所があります。また、飲み薬、注射ともに、週1回の投与製剤が販売されております。
SGLT2阻害薬について
SGLT2阻害薬は、日本では数年前に発売された新しい糖尿病薬です。腎臓での糖の再吸収を抑制する事により、尿に排泄される糖が増加し、この結果、血糖が減少します。また、体から糖が排出されますので、体重減少も期待できます。これまでの糖尿病薬と作用が異なるために、薬剤によって1型糖尿病に使用ができます。また、この薬の最大の特徴は 臨床研究により、心血管による死亡リスクの減少、心不全の抑制効果、腎症の悪化の抑制作用が明らかにされていることです。作用機序の反面、脱水や膀胱炎に注意が必要となります。
グルコースモニターリング機器について
持続グルコースモニターは、皮下組織に専用のセンサーを装着し、連続的にグルコース濃度をモニターする方法です。皮下間質液のグルコース濃度を測定するため、実際の血糖とは若干の解離があるものの、機器の進歩により、小型で、ほぼ誤差がないグルコースのモニターが可能となりました。これを使用する事によりこれまで把握する事が困難であった1日の血糖値の変動を把握できるようになりました。これにより、食後高血糖や低血糖などの血糖変動が把握でき、より適切な治療を選択する事を可能にしました。
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- 院長
- 山口 賢
- 診療科目
- 内科・糖尿病内科
診療時間 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日・祝 |
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9:00-13:00 | ○ | ○ | ○ | ― | ○ | ○ | ― |
15:30-18:30 | ○ | ○ | ○ | ― | ○ | ― | ― |
最終受付時間:午前12:30